田口愛子 個展「Bodyscope」
Aiko Taguchi solo exhibition "Bodyscope"
2022.11.11 Fri -11.27 Sun
13:00 〜 20:00
休館 月曜日・火曜日
Closed on Mon & Tue
会場venue: Feb gallery Tokyo
*ご来場の際にご予約いただく必要はございません。
*会期中は日没と共に絵画作品を時計回りに90度回します。
田口愛子
Aiko Taguchi
1994年 東京都生まれ。女子美術大学附属高校でアートとデザインの基礎を学ぶ。2015年 ロンドン芸術大学 セントラルセイントマーチンズ ファウンデーション修了。この頃から人体をモチーフに制作を始める。2018年 ロンドン芸術大学 ウィンブルドンカレッジオブアート卒業。現在は東京を拠点に活動をしている。
主な展示に、2021年 「35°40'10.0"N 139°45'42.7"E」(ギャラリー林・東京) 「EPIC PAINTERS vol.8」(THE blank GALLERY・東京)「SHIBUYA STYLE vol.15」(西武渋谷店)「WATOWA ART AWARD 2021」青井茂賞受賞。2022年 「THE SELECTED vol.1」(elephant STUDIO・東京)「35°40'57.4"N 139°44'29.1"E」(MATTER )「nine colors」(西武渋谷店、阪急うめだ本店)など。
instagram: @aikotag website: https://www.aikotaguchiart.com
この度、Feb gallery Tokyoでは、アーティスト田口愛子(Aiko Taguchi)による個展「Bodyscope」を開催いたします。
身体=ボディはつかめそうで、つかめない。見ることができるようでできない、蜃気楼のようなものなのではないだろうか。田口の作品を見ているとそんなような気がしてくる。現に自分の身体は、これまでも、そしてこれからも鏡像でしか見ることができない。私は私の身体が大衆からどのように見えているのかを、想像することしかできない。
田口は我々が自身の中に持っている身体のイメージを解体し、それを組みなおすことで、自身の持つ究極の身体的な美のイメージをキャンバス内に具現化している。
私たちの持つ、手足口耳お尻など各部位のイメージ。時代や環境によって我々の身体のイメージは変化し続けた(今も絶えず変化している)が、いずれにせよ身体は美術の歴史において美のイメージの源泉であり続けた。田口の絵画は美のイメージの源泉を掘り起こすような感覚を観る者に与える。
田口の創作の動機はいたってシンプルだ。
「自分が美しい、面白いと思う身体の形を描く。」
田口はまず、実際に撮影された裸体のヌード写真をスキャンする過程で身体のイメージを変形しゆがませる。そのゆがませた身体のイメージをデジタルでコラージュして、作品のモチーフを自らの手で作り上げる。その時選ばれる部位や、コラージュの重ね合わせ方の唯一の判断基準は、田口が”美しい”と思うかどうかそれだけである。
今、当ギャラリーに横溢している身体のイメージの数々は、どこかに実在する身体のイメージ(それもカメラのレンズを通している以上鏡像ではあるが)でありながらも、田口自身の手によって解体され、田口自身の美の基準によって再構築された究極の身体的な美のイメージである。
我々が身体という言葉から連想する具体的な部位、例えばお尻のふくらみ、あばらの浮き出た胸元、指や爪、それらの表象的なイメージがキャンバスに並べられ、重ねあわされた時、我々の身体に対するイメージ自体が解体され、組みなおされるような感覚を覚える。田口の描く身体=ボディは観るものの“身体”のイメージや認識を揺さぶるのである。
執拗に身体=ボディのイメージが変形され重ねあわされ、絶えず形を変えていく、その制作の過程は、我々が時代や環境によって身体のイメージを絶えず変化させてきたその歴史と同期するかのようだ。
田口にとって、身体のイメージが変形され重ねあわされるということは、大衆の身体のイメージを疑うと同時に、自身の身体の美的なイメージにも疑いの目を向けるということでもある。田口の絵画に我々が対峙したとき得も知れぬ不安感に襲われるのは、私たちが当たり前のように受容し、同時に享受してきた身体のイメージそのものを疑うことになるからだ。
コラージュという手法そのものが既存のイメージの制約を利用しその不自由を自由に扱うことで、新しいイメージを生み出す手法と定義するならば、田口はコラージュという手法を用いて、身体という大衆によって制約化されたイメージを、その檻から解き放とうと試みているのではないだろうか。制約化された身体のイメージそれ自体が、絵画作品としてキャンバスに配置され重ね合わせられたとき、奥行きを生み空間性を獲得しているということが、その制約から身体=ボディが解き放たれて躍動していることの何よりの証だ。
身体=ボディはつかめそうでつかめない。本展覧会では、そのつかめそうでつかめない身体=ボディのイメージをつかみ取りに行くかのような視点で描かれた、まさに身体にScope=ある領域を覗き込む作品の数々を展示する。
未踏の人体世界、その最深部を覗き込むボディスコープをお楽しみに。
Feb staff 山口健太
また、会期中は日没と共に絵画作品を時計回りに90度回します。